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ピエール・ルメートルの「死のドレスを花婿に」を読み終える※ネタバレあり※ [本]

「その女アレックス」
昨年の海外ミステリー賞を総なめにしたといっても過言ではない作家の作品
死のドレス~のほうが先に書かれた作品とのことだけれども、この作品も第二章に突入してから、なんだ?って展開。

ネタバレあり




ネタバレとしては、不幸な女ソフィーは、ストーカー男のフランツが仕掛けた罠にはまっていた。物忘れが激しくなったと思っていたのはフランツが家宅侵入で物を盗難して、数日後に別の場所に戻したりしていたから。精神的に不安になり飲み始めた薬に、別の薬をまぜられて鬱症状がでてきたり。

仕舞には義母、夫が不慮の事故に見せかけられて殺されて、失意のソフィーが得たベビーシッターの仕事で雇い先の男児まで殺されて、逃亡することに。

逃亡先でもフランツの執拗な行為は続き、ソフィーは別の戸籍を得るために偽造身分証を買い結婚する。

結婚相手は、フランツ。
そこまで仕込んで導くフランツってすごい。

このフランツの行為を描く章は、精神的に追い込まれていくソフィーがかわいそうすぎて読んでてつらい。フランツの日記仕立てで小刻みに読みやすくなっているとはいえ疲れる。
どうしてそこまでソフィーを追い詰めていくのか。それが読み進めていく力にはなるけれども、やっぱり可哀そうすぎる。

読み始めは、ソフィーをスカーレット・ヨハンソンでイメージしていたけれども、やせ細ってやつれていく感じから最終的にはキーラ・ナイトレイになった。

それはさておき、フランツが自分の人生を崩壊させた張本人だと知らずに結婚してしまったソフィーのその後。

彼女は、新しく得た戸籍と名前に満足し生活していた。
だけど、ふとした時に過去の自分の身分証明書の写真を見つけてしまう。
そして、薬によって意識朦朧したときに彼が誤って「ソフィー」と呼んだことで気が付く。

精神的な病が悪化したとみせかかけて、こっそり外出。
喫茶店にいると、フランツの乗ったバイクがこっそりと店内を見ていることを確認。
なにかにGPSが仕込まれていると探すと携帯電話の裏蓋に発見。

そして、自宅の地下室にフランツがソフィーを監視していた時の写真、記録を見るける。
そこからソフィーの反撃。彼女は薬を飲むがすぐに吐き出す。しかし、精神的に朦朧としている演技は怠らず。

自殺未遂をして入院。
携帯電話を置いたまま病院を抜け出し、親友の家へ行きパソコンを用立ててもらい、実父のもとへ行く。
チャットを利用して実父と会話。ソフィーの亡くなった母は医師で、そこに何かがあるのではないかと考え記録をさぐる。

フランツの母はソフィーの母の患者だった。
そして自殺していた。それを恨んだフランツはソフィーの母を探したが、すでに死んでいた。だからソフィーへ攻撃をはじめた。

フランツは名前が変わり逃亡犯のソフィーの行くあては実家以外ないと監視を開始。
ガレージに積まれた段ボールに医療記録があることを発見。
そこから母の診療記録を持ち帰る。

そのタイミングでフランツのもとへ帰るソフィー。
するとフランツの様子がおかしい。
ふさぎ込み、覇気がない。

ソフィーが隠していた薬をフランツに飲ませ始める。
立場が逆転。ソフィーは地下室の記録をすべて焼き払う。
致死量の薬をフランツに飲ませ、フランツの母が自殺するときに来ていたウェディングドレスを着せて、自宅を去る。
意識を戻したフランツが窓からソフィーを追いかけ落下し死亡。

フランツがふさぎ込んだ理由は、医療記録にあった。
心から愛していた母は、フランツを愛していなかった。
幼いころに両親を亡くしたフランツの母。その原因が自分にあるのではないかと考え精神的な病を抱えていた。
そんなときに妊娠した第一子の女児に、自らを重ねていたが死亡してしまう。
そして妊娠した第二子のフランツは第一子を殺して生まれてきた子供だと思い込むようになる。結果、母は自殺をする。

医療記録は、ソフィーの父が仕込んだものだった。
父は娘を不幸にした相手に復讐をした。


結末で、ソフィーがソフィーには戻らなかった。
名誉回復ではなくて、私怨に対して私怨で仕返しをした。
児童殺害、逃亡中にも二名殺害の容疑があって、フランツの仕業との状況証拠があったとしても、完全な名誉の回復は得られないだろうし、失ったものは戻ってこない。
だから、ソフィーはソフィーを捨てのだろうけれども、ソフィーに戻ってほしかった。
そうしないとフランツに殺された人たちがうかばれない。


文章のリズムが良くて展開には驚く。
彼の作品で未訳作品はまだあるようなので翻訳が楽しみ。

その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス (文春文庫)

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