SSブログ

翔田寛の「真犯人」を読み終える※ネタバレあり※ [本]

誘拐児を読んだ事がある翔田寛。
久しぶりに読んだのは、誘拐をテーマにした小説が好きだから。
この作品は、時効を迎えた児童誘拐殺人事件の被害児童の父の殺人事件の捜査。

だけれども、児童誘拐事件の捜査がほとんど。
41年前の事件を27年前の時効直前の特別捜査班による再捜査の回想という形式で書かれている。

事件解決の手掛りが41年前の誘拐事件に関連があるとにらんだ捜査官が、27年前に再捜査を指揮した元警視の重藤に話を聞く。

この2重のフィルターがかかっている書き方、謎がほどけ解けていく展開で良かった。


ネタバレあり





ネタバレとしては、わかりやすい。
そんなに登場人物多いわけじゃないし、誘拐され殺害された男児の祖父が警察に迫られた後に自殺をしたから、これは家族が関わっているなとわかる。

だけど、確実な証拠がでてこなくなって捜査難航。
どうやって追い詰めていくのかという展開になっていくのだけれども急展開。

男児の母親が、父親を殺した犯人なのだけれども、病気で入院し手術をすることになる。
その病院で看護師をしている娘。

娘を監視していた刑事が彼女の異常な行動に振り回される。
彼女は、41年前の弟の身代金受け渡し場所を訪れ回る。
そして、最後の電話ボックスで警察に確保され泣き崩れる。

という、衝撃的展開。

母は病にふけり、手術するにあたり、弟の事件について娘に真相を伝える。

幼かった彼女は、弟になにが起こったのか何もわからなかった。
母も何も教えてくれなかった。自分の記憶が自身が見聞きした事なのか、後から報道などで見知った事なのか判断がつかなくなり、弟の死の責任の一端を感じていた。
弟への詫び、冥福を祈り、身代金の受け渡し場所を訪れていた。


事件は、弟が祖父の家で遊んでいる時に花瓶を割ってしまう。
それに起こった母は、息子を叩くと、その勢いで息子が頭を打ち付け死んでしまう。
誘拐に見せかけるために、祖父が動く。
それが41年前の事件の真相。

それから41年後。
誘拐事件の時にはすでに離婚していた男児の父は、離婚以前に家族ぐるみの付き合いをしていた友人を病院へ見舞う。
その時に友人の娘が持参したアルバムの写真に写る息子へ贈ったサンダルから、息子の誘拐殺人事件の真相に気が付く。
父は元妻に迫り、金と死んだ息子へ謝罪を要求。
元妻は、元夫を刺殺。
これがこの小説のはじまりの事件。



不思議なのは、どうして父親は元妻に金銭の要求をしたのだろう。
慰謝料?息子の死の真相を知ったのに、お金を要求する現実的な行動は違和感あるけれども、41年前だからその程度になってしまうのか。でも、この父親は息子へ贈ったプレゼントを大事にしている想いやりある人。

可哀想なのは誘拐殺害された男児の姉。
何も知らずに母と二人で暮らしてきて、その母が弟を不慮の事故とはいえ殺してしまって隠ぺいしていたのだから。

真相がわかって、やるせない悲しい気持ちになる。

最後は、特別捜査班の刑事たちの執念が実った事、仕事愛が完結した事清々しさで終わるから、刑事小説しての終わり方としては良いんだけど、男児の姉の気持ちを考えるとやるせなさが強烈に残る。


真犯人 (小学館文庫)

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント