ジェノサイドから11年ぶりの長編「踏切の幽霊」

ホラー小説っぽいけれども、ホラー小説っぽい場面はあるけれども、全体的には幽霊の存在を追う雑誌記者の話なので、ミステリーになるのかな。


年を取ってからニュースで理不尽な悲しい事件、事故を見ると心苦しさが強くなった。
この小説も、幽霊になった女性の素性が明らかになっていく過程で、死ぬほどつらいだろうけれども、懸命に生きていたのにって、読んでいて辛い。

主人公の雑誌記者の松田が、仕事中心の生活で妻と一緒に過ごす時間が少なかったと妻が病死してから、妻は幸せだったのかと自責の念にさいなまれている。その無念を女性の身元を追う原動力にしていて、その力がもらたす結果が良かったって事で終わる。

松田が政治家をぶん殴っても、深夜1時にそいつが死んでも、気持ちは晴れない。
殺されてしまった者が行きかえるわけではないから。

前向きにとらえる事もできる結果ではあるんだろうけど、むなしさを強く大きく感じる結末だった。

日常生活の中に入り込んでいる幽霊、交霊。
その絶妙な加減が素晴らしかった。亡くなった人がこの世から消えてなくなってしまうなんて嫌だ。
自分にとって大切な人は、この世のどこかに居て欲しいと願う。