貴志祐介の「鍵のかかった部屋」を読み終える。※ネタバレあり※ [本]
硝子のハンマー、狐火の家の榎本と青砥のコンビ?による密室謎解き短編。
硝子のハンマーは長編であるけれども、作中でちょっと触れられている部分があるのは、シリーズものであることを印象付けさせる狙いがあるのかな。この作品の中でも、別の作品の事件が、こんな事件もあったという例えででてくるし。
それにしもて、作品が進むごとに青砥弁護士がぶっ壊れていく。
どんどん天然というか、とぴょうしもないキャラクターになっていくので、榎本いわく「多忙で疲れているんでしょう」だけど、いい味だしてきている。
だけど、そうなってくると存在している理由が、榎本の身元保証人というか、弁護士という職業の信頼による行動の幅が広がるくらいなもんになってしまう。
ネタバレあり
作品は密室トリック。
密室トリックだから、どのように密室にしたのかを解きほぐすものなので、犯人を証明するものではないのだからいいんだろうけど、状況証拠がそろっているのかもしれないkれども、犯人を示す確たる証拠みたいなものはない。
犯人が誰であるのかも、話の中心にはない。誰が犯人であるのかは、わかっているから。
そんな密室を中心の作品だけれども、読みやすくっていい。
表題の鍵のかかった部屋よりも「歪んだ箱」が好き。
犯人が追い詰められていく感じがいい。もっと犯人がどぎまぎしたり、反論したり、翻弄があってもいいかな。古畑任三郎みたいになっていいし。
テニスボールを野球のピッチングマシーンで打ち出してドアを閉めるというトリックだったけど、ボールの回収方法が、欠陥住宅の床の傾きを利用していたり、ありふれた状況を密室にはしないで、特殊な状況を密室にしているからこそのトリックでよかった。
作者的には、密室を考えるときは、都合よく状況を変えてしまえばいいんだから簡単だった!?
そんな考えだと、「鍵のかかった部屋」は、ありふれた状況で作り出す密室だから大変だったろうな。
鍵はかかっていなくって、開けるふりをして占めていたんだから。
「佇む男」
これは、あんまり面白くない。
死後硬直で座ったんだろうなってのがわかってしまったから。だけど、張られた幕の意味がわからなかった。
滑り止めでつかわれていたのか。そこまで周到な準備が必要なんだな。密室をつくるには。
「密室劇場」
これは、狐火の家の続きというか劇団で、また殺人が起こった。
故意ではなかったんだけど、漫才の練習で偽物のビール瓶と本物を間違えて、殴ってしまって死んでしまう。
どーして間違えたんだろう。鏡台においてあるラベルの張ってあるビール瓶。鏡には小道具と書かれている。だから、それで殴ったら本物だった。どーして小道具と書かれていたんだ?見間違えたのか?
密室は、死体が見つかった下手の楽屋が、売店の裏の出口と舞台の上を通って反対側にしかない。
この密室をどーやって犯人がつくったのか。というよりどーやって下手の楽屋から脱出したのか。密室トリックというより脱出トリック。
それは、舞台の書割をもってゆーっくり動いて下手から上手へ。アハムービーみたいに、ちょっとちょっと動いていると気が付かないってトリック。観客はわからないだろうけど、演者はわかるだろ。
わからないような、個性の強すぎる強烈な劇団員ばかりだとしても、無理があるんじゃないかな。
とはいえ、密室トリックは面白い。
密室トリックが優秀な小説ってどんなのがあるのだろうか。
新世界より 上
新世界より(中) (講談社文庫)
新世界より(下) (講談社文庫)
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