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奥田英朗の「オリンピックの身代金」を読み終える※ネタバレあり。 [本]






奥田英朗を読むのは、町長選挙ぶりだったはず。
誘拐のジャンルの小説は好きなので身代金と名のつく小説だし、奥田英朗の最悪、邪魔は過去に読んだことがあるし、骨太の物語を楽しませてくれるだろうってことで選択。

読む終えるのにずいぶん時間がかかった。
話は面白いのだけど、処方されている薬の説明が気に眠くなる場合があると書かれていて、朝夕の眠さがはやくやってきて、寝てしまったのもある。
それから、オリンピックの時代背景が、華やかさの裏側を描いていて、それが現状の自分に重ねてしまった部分もあって、悲観的に考えすぎてしまって呼んでいられなかったのかなとも思う。

以下、ネタバレあり。

オリンピックの身代金 / 奥田 英朗


映画は見ていないのでわからないけど、ALWAYS 三丁目の夕日は東京タワーができた時代を描いた映画だと思うのだけど、オリンピックの身代金の時代は東京五輪開催の年の昭和39年。
明るい未来が待ち構えていて、皆が健気に元気に前向きに頑張っていた古きよき時代というのは、ごくごく一部だった。

北京五輪を開催するときに、世界の国々に見られたくないもの、見せたくないものを隠す。汚いものに蓋をしているというような報道があったけど、当時の東京もそれをやっていた。
突貫工事も、孫受けの会社が地方の寒村から出稼ぎ労働者を過酷な環境で働かせている。

日本が成長し、先進国といわれる国の仲間入りしたあとも、利用者も少ないであろう場所に道路、新幹線を通すという計画を進めるのも理解できた。東京だけが、富を得ていた時代があって、富を奪われていた地方が、富んだ国に富を求めるのは当たり前のことだから。

主人公の島崎は、東京大学の大学院生。
秋田出身で兄が出稼ぎ労働者で、東京の羽田の飯場で働いている。
その兄が死に、飯場の現状をしった島崎は、ちょっと勉強ができるだけで、たったそれだけの違いで、大きく立場、貧富の差、階級が生まれていることに疑問を感じ、飯場で働くことにする。

彼が純粋でいい人間。
テロリストなんだけど、大義に共感。
だけど、方法は間違ってはいると思うけど、ねずみ小僧のように、悪いことには使わないであろう彼だから許されてもいいのかなって思う部分もある。

飯場で働くようになって、そこで働く、人夫たちは我慢強く、現実を受け入れている。反感することもなく、仕事が終ればバカな話もするし笑いあう。
そこにも疑問を思う。なぜ反発しないのか?

答えは反発する方法をしらなかった。
島崎のような男の登場に彼らは期待を寄せて、彼の行動をしったあと、オリンピック妨害については知らないのだけど、人夫から賭博でお金を巻き上げている元ヤクザを殺害の共犯になったこと、オリンピック妨害予告で警察のマークが厳しくなり、(五輪妨害情報はマスコミに流せないので)共産主義であるといわれていることなどを知っても、彼に期待をかける。

最終章は、オリンピック開幕日の昭和39年10月10日。
うまいこと国立競技場に潜り込んだ島崎。
ここに至るまでに知り合ったスリの村田と計画を実行。
この実行は二度目で、一度目は東京駅でやったがあと少しのところで失敗している。

村田が、選手送迎バスに隠れているのを発見されてしまう。
それを見た島崎は聖火台を爆破させに行くところを、警察官に撃たれてしまう。

生死は描かれていない。
オリンピックは無事に開幕して話は終る。

警察の捜査、公安の捜査も書かれていて、刑事の落合が明るい未来のために頑張っている。
落合、島崎の大学時代の同級で五輪警備の最高責任者である警察官僚の息子の須賀はテレビ局勤務なのだけど、警察、マスコミのどちらかが島崎が五輪を妨害しようとしている意味を知り、考え悩む場面があってもよかったんじゃないかな。

どうして島崎はテロをする理由を伝えなかったのだろう。
政治的メッセージがあってもよかったと思う。

昭和の高度成長期に突入するときの日本を生々しく知りたければこれを読め!

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