連城三紀彦の「造花の蜜 上下巻」を読み終える。※ネタばれあり※ [本]
連城三紀彦「造花の蜜」
今まで読んだことのない作家だったけれども、誘拐小説が好きで何かないかとネットで検索して引っかかった作品。
連城三紀彦の作品でもうひとつ「人間動物園」が気になり同時購入。
まだ読んでいる途中ではあるけれども、密室劇からはじまっているので、これからどんな展開になるのか楽しみ。
さて、造花の蜜
壇れい主演で映像化されたようだけれども、彼女が演じていた「蘭」という女のイメージは吉瀬美智子だった。
誘拐の話なのだけれども、単純な構図ではなくて、複雑な家庭環境を絡めてあるので、全てを明らかにしたくない誘拐された男児の母親の言動なども、謎のひとつとなって引っかかり、それが明らかになっていく楽しさがある。
ネタバレあり
この作品のすごいところは、男の子が誘拐された事件では、男児はお母さんが誘拐されたと思っていた事。
その事件は、見世物であって実はその裏でもうひとつの誘拐事件が起こっていたこと。
そして、その誘拐事件で誘拐されていたのは、男児の誘拐の協力者であった、男児の母親の実家の工場で働く工員だった事。
工員は自分が誘拐されているなんて夢にも思わずに蘭という女に協力している。
蘭の魅力がどこにあるのか。危なっかしい綺麗な女王蜂に吸い寄せられるように協力しているものたちが多数いるんだけれども、読者にはいまひとつわかりにくい。
蘭についても、詳しく書かれていないし、最終的に逮捕もされない。
工員が誘拐されていることを知った時には、工員の父親の県会議員が二億五千万を支払っていた。
そのお金は脱税、収賄でため込んだ汚いお金。
蘭は汚いお金を狙って犯罪を仕向けていた。
この誘拐に誘拐を重ねてていた部分がすごい。
男児の誘拐事件だけでも、どちらにも誘拐されていると思わせている点もうまいのに。
それからさらに、最終章でもうひとつ誘拐事件が起こる。
これは、被害者の男児の義母姉弟の姉が書いた手記という形なのだけれども、見事に騙された。
映像ではできない文章ならではのトリック。
橋場警部というのが、最初の男児誘拐事件の捜査をしていた警察官なのだけど、最終章にも橋場警部がでてくる。蘭から犯罪を予告する手紙が来たといって登場するのだけれども、手紙が送られてくるであろう前ふりもしっかりあったから、それが不自然ではない。
最初の男児誘拐事件そっくりに展開していく事件なのだけれども、最初の事件では奪われなかった身代金を奪うと宣言している蘭がどんな奪い方をするのか。
結果は、橋場警部が偽物で、警察関係者全員が犯人で、身代金を鞄に詰めたあとに別の鞄とすり替えている。
ただし全部は奪わないで、一億円ぶんだけ減らした鞄を被害者の父親に渡す。
全部奪わない無理をしないところが、蘭のしたたかさなんだろう。
橋場警部ってでてきたら、映像なら顔で違う人だとわかるけれども、文字は同じ。
こんなに綺麗に叙述トリックに騙されたのははじめて。
最初の事件の身代金受け渡し場所に現れた男、もうひとりの父親と言える人、元夫の隣家の人、飾られていた造花、蘭の胸の造花。
三つの誘拐事件が出てくる作品だけれども、どれも完全解明されずに次々に進んでいくのだけれども、消化不良で面白くないことはなく、ぐいぐい読み進める展開力となっていていい。
とはいえ、やっぱり欄に焦点をあてた章があったほうがよかったんじゃないかとも思う。
今まで読んだことのない作家だったけれども、誘拐小説が好きで何かないかとネットで検索して引っかかった作品。
連城三紀彦の作品でもうひとつ「人間動物園」が気になり同時購入。
まだ読んでいる途中ではあるけれども、密室劇からはじまっているので、これからどんな展開になるのか楽しみ。
さて、造花の蜜
壇れい主演で映像化されたようだけれども、彼女が演じていた「蘭」という女のイメージは吉瀬美智子だった。
誘拐の話なのだけれども、単純な構図ではなくて、複雑な家庭環境を絡めてあるので、全てを明らかにしたくない誘拐された男児の母親の言動なども、謎のひとつとなって引っかかり、それが明らかになっていく楽しさがある。
ネタバレあり
この作品のすごいところは、男の子が誘拐された事件では、男児はお母さんが誘拐されたと思っていた事。
その事件は、見世物であって実はその裏でもうひとつの誘拐事件が起こっていたこと。
そして、その誘拐事件で誘拐されていたのは、男児の誘拐の協力者であった、男児の母親の実家の工場で働く工員だった事。
工員は自分が誘拐されているなんて夢にも思わずに蘭という女に協力している。
蘭の魅力がどこにあるのか。危なっかしい綺麗な女王蜂に吸い寄せられるように協力しているものたちが多数いるんだけれども、読者にはいまひとつわかりにくい。
蘭についても、詳しく書かれていないし、最終的に逮捕もされない。
工員が誘拐されていることを知った時には、工員の父親の県会議員が二億五千万を支払っていた。
そのお金は脱税、収賄でため込んだ汚いお金。
蘭は汚いお金を狙って犯罪を仕向けていた。
この誘拐に誘拐を重ねてていた部分がすごい。
男児の誘拐事件だけでも、どちらにも誘拐されていると思わせている点もうまいのに。
それからさらに、最終章でもうひとつ誘拐事件が起こる。
これは、被害者の男児の義母姉弟の姉が書いた手記という形なのだけれども、見事に騙された。
映像ではできない文章ならではのトリック。
橋場警部というのが、最初の男児誘拐事件の捜査をしていた警察官なのだけど、最終章にも橋場警部がでてくる。蘭から犯罪を予告する手紙が来たといって登場するのだけれども、手紙が送られてくるであろう前ふりもしっかりあったから、それが不自然ではない。
最初の男児誘拐事件そっくりに展開していく事件なのだけれども、最初の事件では奪われなかった身代金を奪うと宣言している蘭がどんな奪い方をするのか。
結果は、橋場警部が偽物で、警察関係者全員が犯人で、身代金を鞄に詰めたあとに別の鞄とすり替えている。
ただし全部は奪わないで、一億円ぶんだけ減らした鞄を被害者の父親に渡す。
全部奪わない無理をしないところが、蘭のしたたかさなんだろう。
橋場警部ってでてきたら、映像なら顔で違う人だとわかるけれども、文字は同じ。
こんなに綺麗に叙述トリックに騙されたのははじめて。
最初の事件の身代金受け渡し場所に現れた男、もうひとりの父親と言える人、元夫の隣家の人、飾られていた造花、蘭の胸の造花。
三つの誘拐事件が出てくる作品だけれども、どれも完全解明されずに次々に進んでいくのだけれども、消化不良で面白くないことはなく、ぐいぐい読み進める展開力となっていていい。
とはいえ、やっぱり欄に焦点をあてた章があったほうがよかったんじゃないかとも思う。
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