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連城三紀彦の「人間動物園」を読み終える。※ネタばれあり※ [本]

連城三紀彦の造花の蜜が面白かったし、人間動物園も誘拐小説ということで読んだのだけれども、設定は面白いし、先の展開が楽しみになってぐいぐい読んでいけるのだけれども、結末がなんだかなぁ。

誘拐事件に警察が介入しているんだから、追いつ追われつがあって、最終的には警察が追い込まないと。
事件が無事に解決しなければならないってことはないけれども、犯人に翻弄されながらも追い詰める警察の姿がないと攻防がないと、盛り上がりに欠ける。

主に警察視点で描かれているのだから。
犯人視点で描かれていたとしても、追い詰められながらも逃げるって展開がいい。

ネタバレあり


人間動物園 (双葉文庫)

人間動物園 (双葉文庫)

  • 作者: 連城 三紀彦
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2005/11
  • メディア: 文庫


誘拐された大物政治家の孫娘
家に仕掛けられた盗聴器
それによって被害者の母親は身動きが取れないし、警察も下手に被害者宅に入れない。

被害者の母親は犯人からの指示で、隣家の女性へ手紙を送って警察に連絡してもらう。

盗聴器で家閉じ込められている被害者の母
隣家から連絡を取るしかない警察
外は大雪

重ねれている密室の中で展開する誘拐事件

人間関係も一筋縄ではなくて、誘拐された娘の父親は妾の子供。
大物政治家の父親には愛されていたが、その愛情を受け入れることはなく常に敵対視してきたが、彼の大きな力にぶら下がって生きてきた。いつか権力に一撃喰らわせようと思いながら。

そして誘拐事件を思いつく。
自らの娘には、母親が誘拐されたと思わせて、誘拐ゲームに参加させる。

母親は翻訳の仕事をしていて、反中国の翻訳をしたことを取り上げて、身代金を払わなければお前を殺すと伝える。母親は自身が誘拐されたと思っているが、自身では身代金を作ることはできないし、政治家の義父は自分のためには身代金を用意してくれないので、娘を誘拐されたことにして身代金を作らせる。

このあたりが、二重の仕掛けになっている。
造花の蜜でもそうだったけれども、誘拐されている人物が違っていたという設定が好きなのかな。
この仕掛けはいい。

犯人が誰なのか。
夫婦の狂言なのか?向かいの家から、盗聴している新聞記者の存在も怪しく、隣家のおばさんの行動も不信な部分がある。

犯人が誰であるのかは、最後までわからないことはないのだけれども、事件を解決する手がかりもほとんどなく、警察はお手上げ状態の感じ。

最終的には、犯人の父親から隣家で捜査していた刑事へ犯行動機をふくめた手紙がおくられてくる。
それによって事件の全貌が見える。
これがなかったら完全犯罪成立?と思わせる展開だった。

刑事はなんとなく気が付いてるみたいだったけれども、確証と証拠はつかんでいなかった。

警察を含めて国家へ戦いを挑んだ犯人。
身代金の一億円は、大物政治家が不正に得たと報じられている汚れたお金。
そのお金は父親が受け取ってすぐにすり替えてしまったので、白紙が入ってるのアタッシュケース。
ドラマのように上だけ一万円札にするためにその場にいた警察官から集めた13万円。
それをピン札にすり替えて、プラス収支は0だけれども、警察から奪ったお金。

それで犯人の復讐心はある程度満たされたっぽい。

盗聴器の仕掛けは面白し、二重、三重になっている誘拐のターゲット、設定を生かし切れていない感じはあるけれども、密室劇の誘拐小説はほかにないんじゃないかな。

人間動物園
なんでこんなタイトルなんだろう。
所詮、人間なんて国家に飼われている動物で、小さくて弱い。
だけど、そんな動物も一発狙っているんだぞ!ってことか。

最後に、犯人はセスナ機で国家の象徴的な建物上空からお金をばらまいて突っ込む。
そんな911のテロを思わせる告白で終わる。

これもなんだかな。
ちょっとは警察の威信を傷つけたんだから、新聞などに手記を送りつけて終わりでいいのに。





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